ビジネス・実用書レビュー
D・カーネギー『人を動かす』 コンプライアンスの手前で〜中編

補助金・助成金に強いビジネス・実用書レビューは1冊の本の書評を前編・後編2回に分け、毎月第2・第4月曜日(祝祭日の場合は翌日)にお届けいたします。
2冊目となる今回は、「日本で500万部突破の歴史的ベストセラー」と帯にある創元社 D・カーネギーの『人を動かす』を取り上げます。思いがけず熱くなって長くなってしまったので、今回は3回に分けて前編・中編・後編となります。前編はこちらです。

目次

実用書は諸刃の剣

パワーと善悪二元論

欧米の勧善懲悪的な映画を見ていると、いくつかのパターンがあることに気がつきます。その一つに、宇宙を操れるほどのパワーを巡って、ヒーローと悪者が戦うというパターンがあります。この争いの元になっているパワーは使う者によって結果が真逆になってしまいます。悪の手に落ちるとこのパワーは人々を苦しめます。古くはスーパーマンに始まりハリーポッターやアベンジャーズなど枚挙にいとまがないほど出てくるテーマです。
現実世界でのパワーは法律もその一つでもあります。法律は争いごとに決着をつけてくれるものではありますが、法律をよく勉強してみると抜け道があったり悪用しようとすればいくらでもできてしまいます。
心理学もその一つです。人間の心理を研究して人間関係の悩みを解決してくれるものではありますが、逆から辿って思い通りに相手を操って悪用しようとすればいくらでもできてしまいます。
このカーネギーの著書にも同じように悪用できてしまうほどのパワーがあるからこそのベストセラーなのだと思います。
ここで善悪二元論的に映画のエンターテーメントように「善と悪」を語ることに絡めて、カーネギーが最初にこの本で述べていることに注目してみましょう。

同じものをどう見るかで変わる

「盗人にも五分の理を認める 」というPart 1の「人を動かす三原則」の一番目に上がっているところです。原題では“If You Want to Gather Honey, Don’t Kick Over the Beehive”となっていて、直訳すると「ハチミツを集めたければ、蜂の巣を蹴ってはならない」となります。
日本語版に使われていることわざには「どんなことにも理屈はつくものだ」という皮肉が込められてもいます。
一方、英語のことわざの方には「欲しいものを手に入れたければやり方に注意せよ」という意味があります。なんとなく、考え方のズレを感じるのは私だけでしょうか?
カーネギーが言いたかったことは「悪い奴にも理屈があるもんだが正しいということは変わらない」ということではなく「自分の言いたいことを聞いて欲しいとか一緒に気持ちよくやり取りがしたいと思うなら、俺の話を聞けと力づくでやってはいけない」ということを言いたかったのだと思うのです。
ここは是非とも内容を読んで、色々な例を通して同じものでも立場や考え方によってどちらが正しいとも言えないようなものがあるのだということを理解していただくこととしましょう。

悪とは何か

善悪を自分の物差しで測って判断するのは簡単ですが、その物差しが対象のものを測るのに適していない可能性を捨てきれないことがあります。
例えば、重さを計らないといけない時に、定規を持ってきて測ろうとしても正しい数値を出すことはできません。
これは本当の目的を見失ってしまった時にやりがちなことです。
人類の歴史上で、出発点を自分の幸せとしなかった言動が存在するでしょうか。
ただ、自分の幸せが何であるかは人それぞれです。色々な幸せの形がある中で、葛藤は避けることはできないでしょう。
その中では自分の幸せへの道を邪魔するものは悪であると定義することも可能です。
それで本当に幸せが手に入るのであれば。

『人を動かす』書評の最終回の次回は、カーネギーの伝えたかったことと企業活動とコンプライアンスというところを落としどころに、着地を目指します。


ライター:鶴見紀子(True Color Create / WE GiRLs CAN

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